声が出ない人との関りのポイント

toiro通信

声が出ない人とは

 ここで言う、声の出ない人とは、私のように体調の悪化で声が出せない人、呼吸器や気管切開をして声を出せない人など、言語理解はこれまで通りだけれど、発声するための器官やその動きに問題があって発声ができない人を指します(構音障害)。

開かれた質問と閉じられた質問の使い分け

開かれた質問とは

 開かれた質問はYES/NOでは答えられないような、答える人によって内容に幅が出てくる自由度の高い質問です。
例)最近どんな感じ?、体調どう?、味はどう?、○○についてどう思う?など

閉じられた質問とは

 閉じられた質問と言うのは、答える人がYES/NOで答えられる質問です。声が出なくなってもほとんどの場合、その人なりのYES/NOのサインがあります。
例)痛い?、苦しい?、美味しい?、AとBどっちがいい?など

基本的には閉じられた質問を優先

 声が出ない状態にあると、大抵の場合は全身状態も低下しています。やり取りが日々のケアに関する確認などであれば、適切な閉じられた質問で簡潔にやり取りをした方が、答える人の負担が少なくて済みます。
 ただ、YES/NOで答えられない場合もあるので、「どちらでもない」「どちらでもいい」が存在することを念頭に質問してみましょう。
 閉じられた質問は、質問する人の聞きたいことしか聞けません。聞き方や質問項目を相手を思いやった内容にすることで、得られる情報や信頼関係・反応は大きく変わります。

 一方で、傍から見ているだけではわからないような体調の変化や改善してほしいポイント、喋りたいことや伝えたいこともあります。雑談も声が出なくなると一気に減ってしまいます。トーキングエイドや文字盤などを使える人であれば、(援助者さんの)時間や気持ちに余裕がある時に、ご本人の近くに行き、目線を合わせながら、開かれた質問で聞いてみてください。その時間できっと心が救われます。

ふぉれすと
ふぉれすと

私のケアメンバーのある看護師さんは、毎回私の近くに来て、「先週の○○どうだった?」「体調どんな感じ?」と私の声を聴く時間を作ってくれます。出会ったばかりの看護師さんのさりげない優しさに救われています。

閉じられた質問をする時には「ある質問」で!

「ある質問」と「ない質問」

 「ある質問」と「ない質問」は、私の造語です。同じ閉じられた質問でも、「ない質問」をされてしまうと、すごく答えにくくて、答えと違う解釈されることも多くて、聞き直しも多くなり、答えるのが嫌になってしまいます。でも、実は現場で多用されているのが、ない質問です。

 「ない質問」とは、「痛くない?」「しんどくない?」「苦しくない?」「○○いらない?」「○○しなくていい?」など、ないこと前提で聞く質問のことです。

 この聞き方をされると、例えば痛みがある時は「いいえ」という合図をすることになります。「いいえ」の合図イコール痛くないと捉えられることも多く、こちらの意図が伝わらない現象が起きてしまいます。
 
 これを「痛みある?」「○○いる?」「○○しようか?」などの「ある質問」にしてくれると、こちらの意図が正確かつスムーズに伝わります。

2つ以上の選択肢を提示する時は間が大事!

 私達、発声が難しい状態にある人は、往々にして反応することにも時間がかかります。全身の体の動きや脳の反応も低下しているためです。なので、会話でコミュニケーションをとる時よりも、ワンテンポ、酷い時はスリーテンポ以上反応が遅れます。

 それでも、会話の時と同じように、「A、Bどっち?」「A?」「B?」となかなかなスピードで質問されると、Aで反応しようとしててもタイミングを逃してしまうことが多いです。

 自分の思いが伝わらないまま話が進んでいくのはなかなか悲しいものです。そして、答えがAでもBでもない時も結構あります。

 是非、その人が反応できるテンポに合わせた質問と、反応がない時に別の可能性を探る余裕を持って関わって貰えるとありがたいです。

 反応がイマイチだと機嫌が悪くなる方がたまにいますが、体調が悪く反応するのがしんどい時、質問のピントがズレすぎていて反応できない時、反応していても読み取ってもらえていない時、様々理由があります。

 目の前の方の心の声が聴けるタイミングを身につけられると、コミュニケーションがスムーズになります。

話せない人の感情を慮る!

話せなくなると、圧倒的に減るのが雑談です。雑談がなくなると、ちょっとしたニュアンスやクッションとなる会話が無くなるので、コミュニケーションがスムーズにいかなくなることがあります。

 当事者発信の会話がしにくいのはもちろんですが、話しかけるのを躊躇されることもあります。痛みや苦痛を伴う処置をしていても無言だったり、声掛けをしないので痛くても伝えられなかったりということが、特定の人ですがあります。

 声掛けなく、痛みがあると怖いです。何故なら痛いことをすぐに伝えられないからです。痛いと発信するタイミングには別の動作に移っているので伝えるのを諦める事が多いので、その人のケアがずーっと苦痛なまま過ぎていきます。

 こういう時に、なんだか物になった気分になります。突然聞こえてくる爪を切る音、黙って傷口を触られる痛み、黙って撮られ、保存されてる写真、生きてる人間なんだけどなぁと少し悲しくなる瞬間です。

 その人が何が苦痛か、どんな不安や症状があるのか、ケアの見通しをどうやって持ってもらうか、どうやったら苦痛少なく過ごすことができるのか、ほんの少し心を傾けて相手を慮る(おもんぱかる)ことでコミュニケーションの質は大きく変わります。コミュニケーションの質が変わると生活の質も大きく変わります。

 些細なことが実は大きな力を持っています。些細なことの積み重ねが、人生を変えることもあります。コミュニケーションや人同士の関りがもたらす可能性は無限大です!

まとめ

①基本的には閉じられた質問の「ある質問」で誤解の少ないスムーズな意思疎通をしましょう!

②開かれた質問で聞く時は、心の余裕を持って、どんな思いでいるのかどんな体調なのかをじっくり聴く姿勢で関わりましょう!

③選択肢を提示する時は、その人の反応に合った間を大事に、選択肢以外の答えがあることも想定しておきましょう。

④どんな状態でも、たとえ反応がなくても、快・不快や感情はあります。相手を尊重した関わりをしましょう。

コミュニケーションが温かくスムーズになると、流れる時間がとても豊かで心地よいものになります。ぜひ1度、今のコミュニケーションを見直してみてください。
ふぉれすと
ふぉれすと

ぜひ、toiroの指差し文字盤もコミュニケーションのきっかけに使ってみてください。(ここからダウンロードできます。)

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